失業手当の「裏技」、職業訓練の審査ずさん 検査院指摘
 全国の公共職業安定所があっせんしている職業訓練をめぐり、1年以上の長期訓練を希望した求職者に対し、必要性を十分検討せずに受講を認めるなどしていたことが会計検査院の調べでわかった。求職者が失業手当をもらっている間に職業訓練を受けると、給付期間が訓練を終える日まで延長される。延長により年間約360億円が雇用保険の財源から出ているため、厚生労働省はチェックを厳しくするよう通知した。

asahi.com:2005年10月21日17時51分

 訓練は3カ月や6カ月が多いが、1年や2年のものもある。仮に2年の訓練を受けると、本来の給付日数が90日でも、800日以上に延ばせる。失業保険のマニュアル本は「裏技」として紹介している。

 厚労省によると、手当が延長された人は、03年度は9万2千人、04年度は10万4千人いた。延長による手当の支給額は、両年度とも360億円前後に上った。

 検査院はそのうち、東京や京都などの61の安定所で1年以上の訓練をあっせんされた約1千人について調べた。

 その結果、約7割で、安定所が訓練が必要と判断した根拠の記載が求職票になかった。求職者との職業相談の内容はそのつど求職票に記載されることから、訓練の受講に当たっては、十分な相談や検討がなされず、求職者の希望で決まっていたとみられる。

 また、重複も含めて約3割で、IT企業への就職希望者が建築関係の訓練を受けるなど、求職票の希望と訓練内容とが一致していなかった。

 このため、検査院は「延長給付が適切だったという説明責任を果たせない。また、手当狙いの悪用を防ごうという意識も欠けている」と改善を求めた模様だ。

 これを受け、厚労省は9月、求職票への記載を徹底させるとともに、必要と認められない訓練については受講を認めないよう文書で通知した。