政府はアスベスト(石綿)による被害者の救済措置で、労災認定の対象外となる被害者と遺族への給付財源のうち、企業分の負担はアスベスト関連の企業に限らず、労災保険に加入するすべての事業者から徴収する方針を固めた。対象事業者は全国で300万以上になる見通し。原因企業などの事業者は負担額を上乗せする。来年の通常国会に提出予定の救済新法案に盛り込む考えだが、経済界から「事実上の増税策」との反発があがるのは必至とみられる。

毎日新聞 2005年11月25日 3時00分

 政府は29日の関係閣僚会議で、新法大綱案を決定する。救済費用の財源は国と地方自治体、事業者で新設する基金で拠出。事業者には07〜10年度分の救済給付金を負担させる考えで、総額300億円程度と見込んでいる。従業員1人以上を雇用する事業者はすべて対象となり、労災保険の徴収システムを活用して徴収するが、原因企業とそれ以外の事業者の徴収率には差をつける。

 一方、06年度までの拠出分は国が負担し、政府は約350億円を今年度補正予算に計上する。地方自治体は事業者と同様に07〜10年度分を負担し計80億程度となり、総額は3者で700〜800億円になる見通し。

 政府はアスベスト問題を「社会的な問題」ととらえ、「産業界全体が何らかの形でアスベストの恩恵を受けてきた」との考えに立ち、幅広く救済給付金を徴収することにした。【葛西大博】