農業経営の法人化が進み、農業の場でも労働災害補償保険(労災保険)への加入が進んでいる。だが、個人経営で常時雇用労働が5人未満の場合は任意加入であるため未加入の場合が多い。しかし「5人未満」でも労災に対する補償を免れるものではない。労働基準法で「1人でも人を使えば労災補償の責任を負う」ことを認識しなければならない。今日の農業経営は、規模拡大で雇用労働に頼る機会が増えている。労災保険への加入が欠かせなくなっている。

 労災保険は、基本的にすべての労働者に適用される。農事組合法人や株式会社など法人格の団体の場合の従業員は当然加入となる。個人経営や任意組合でも、常時5人以上雇用する場合の従業員は当然加入になる。そのため、経営の法人化で労災保険への加入が進み、農業にかかわる加入者は29万5000人に上っている(2005年)。

 ただ、常時雇用労働が5人未満の場合の従業員は、暫定的に任意加入となっており、未加入もある。しかし、労働基準法では、職業の種類にかかわりなく事業に使用される者で賃金を支払われる者は「労働者」となり、業務上の負傷、疾病、傷害、死亡などの災害の場合、使用者に補償責任がある。

 労働者に重大な過失がない限り、使用者側に過失がなくても、その責めを負う。だから労災に入っていなかった場合、大変な事態になる。補償のために農業経営が行き詰まることにもなりかねない。事故に対する補償、それは生活を保障することでもある。労災保険への加入は最低限の対応だ。

日本農業新聞 - 論説 記事:2008-2-19 11:42:00