2016年01月15日

落合事件(東京地裁H27.9.18判決)付加金の支払について

1、労働組合が未払いの時間外手当の請求時に付加金として計算額の倍額を請求してくる
  ことがあるが、付加金は裁判所がその支払いを命じることによって初めて生じるものであ
  る。

2、控訴審の口頭弁論終結時までの間は第一審判決により認められた時間外手当の支払
  義務を履行すること(弁済供託等)により付加金の支払義務を免れることができる。


 「労基法37条に違反して時間外手当の支払がない場合、裁判所は、労働者の請求により、使用者に対して、同条により使用者に課せられた義務の違背に対する制裁として同法114条の付加金の支払を命じてその支払い義務を課すことができるが、この義務は使用者が時間外手当を支払わない場合に当然に発生するものではなく、裁判所がその支払を命じることによって初めて生じるのものであり、使用者に同法37条違反があっても裁判所がその支払を命ずるまで(訴訟手続上は事実審口頭弁論終結時まで)に使用者が未払の時間外手当の支払を完了しその義務違反の状況が消滅したときには、もはや、裁判所は付加金の支払を命ずることが出来なくなると解するのが相当である(最高裁判所昭和39年(オ)第93号同35年3月11日第二小法廷判決・民集14巻3号403頁、最高裁判所昭和48年(オ)第682号同51年7月9日第二小法廷判決・裁判集民事118号249頁、最高裁判所平成25年(受)第197号同26年3月6日第一小法廷判決・判時2219号136頁参照)。

 そうすると、使用者は、事実審の口頭弁論終結時までの間は第一審判決により認められた時間外手当の支払義務を履行することにより付加金の支払義務を免れることができるものと解され、使用者が労働者に対して、第一審判決によって支払を命じられた時間外手当等の全額を任意に弁済のため提供した場合には、その提供額が時間外手当の全額に満たないことが控訴審における審理判断の結果判明したときであっても、原則としてその弁済の提供はその範囲において有効なものと解するのが相当である。このように解することは、付加金の支払を命じることにより労基法37条による時間外手当の支払義務等の使用者の同条違反の抑制を図る一方で、これに違反する場合に任意かつ早期の履行を促す同制度の趣旨にかなうというべきである。」

 「使用者に労基法37条違反があっても裁判所がその支払を命ずるまでに使用者が未払の時間外手当を支払い、その義務違反の状況が消滅したときには、もはや、裁判所は付加金の支払を命ずることはできなくなると解すべきところ、控訴人のした原審認容額の弁済の提供及び弁済供託は、その限度で有効であり、控訴人は前期弁済供託によって、その限度で時間外手当の義務を免れることから、その限度においては労基法37条に基づく義務違反の状況は消滅したというべきである。
 
 被控訴人は、未払の時間外手当等を確定的に受領するに至っていない弁済供託がされたに留まる場合、労基法37条の義務違反状況が完全に消滅していない旨主張するが、弁済供託は有効な弁済の提供に対して債権者が受領を拒絶したことを前提とするのであって受領拒絶の責めは債権者において負担すべきであるから(民法413条)、被控訴人の主張には理由がない。
 
 他方で、未払の時間外手当の残部については未だ労基法37条の義務違反の状況が存在するが、控訴人は、原審認容額の全部を供託していることに現れているように、労基法37条の義務違反状況の解消に努めているものといえ、これに対して、未だ存在する義務違反の状況は、当審において被控訴人による請求の拡張がされた部分などについて、当裁判所が被控訴人の主張を認め、原判決を変更したことによるのであって、以上の経過に照らせば、控訴人の労基法37条の義務違反に対する制裁として同法114条に基づく付加金を課すのは相当とはいえない。」

労働基準法
(付加金の支払)
第114条  裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。




tutida2oo2 at 12:55│Comments(0)TrackBack(0)clip!

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