海外法人悪用し保険料逃れ 都内のタクシー会社 数千万円追徴 

 東京都内のタクシー会社が香港に設立したダミー会社を悪用し、厚生年金保険料を低く抑えていたことが25日、厚生労働省への取材で分かった。同省はさかのぼって数千万円の保険料徴収を求めるとともに、同様の事例が全国にあるとみて、日本年金機構に疑いのある事業所への調査徹底を指示した。

 厚労省によると、タクシー会社の事業主は、香港に別法人を設立。従業員は都内の会社に採用された後、香港の会社に転籍。そこから都内の会社に出向している形をとり、両方の会社から給与が支払われていた。

 従業員は香港の会社での勤務実態はなく、厚生年金が適用される都内の会社から支払われた給与は、職種や勤続年数にかかわらず一律15万円程度と、給与額に応じて納める保険料が著しく低く抑えられる“保険料逃れ”の状態だった。

 厚労省は、同社と従業員は、香港の会社から支払われた給与の分の保険料も納める必要があると判断。さかのぼって徴収できる2年分の保険料を支払うよう求めた。同社は指摘に応じて保険料を分割納付しており「(保険料逃れの方法は)社会保険労務士に提案された」と話しているという。

 今回の事案を受けて厚労省は、8月末に日本年金機構に対し調査を徹底するよう通知。厚生年金が適用される会社と海外の別会社の双方から給与が支払われている場合で、国内で支払う給与が地域の同業他社より著しく下回るケースなどは、会社に立ち入り調査するよう求めている。〔共同〕