国交省が今年7月1日に施行した「改正貨物自動車運送事業運輸安全規則」では、長時間労働を助長する原因である「荷待ち時間」について記録することが義務化された。

 記録の義務化は、車両総重量8トン以上か、最大積載量5トン以上の車両を対象に荷物の集荷と配送をした場所のほか、荷待ち時間、付帯業務、及び荷積みと荷下ろしの開始時間と終了時間等を従来の乗務記録項目に加え、1年間保存する。

 荷待ち時間については、昨年12月に公取委が、荷主の都合で運転者を長時間待たせた上で費用を負担しない事例が多くあり、こうした事例が不当取引を規制する下請法違反に当たると運用基準に新たに明記している。

 荷待ち時間は、荷物の積み込みを行うときに、荷物の到着を待つために待機している時間であり、給与支払いの対償としての労働時間となる。そのため、荷待ち時間の記録を義務化することは、労働時間が正確に算出されることを意味し、荷主に対しては、労働時間への対価を含む荷待ち時間への料金を求めることになる。

 荷待ち時間の記録が残されることにより、労働基準監督署も荷待ち時間を含めた時間を労働時間として認定することが容易になることから、従来を上回る労働時間が算出され、36協定違反等のリスクは一層高まるものと思われる。また、ドライバーによる残業代未払いの訴えも、荷待ち時間分が支払い対象として増加するため、より適正な労働時間の管理とそれに基づく給与支払いが必要になってくる。運送業に多く採用されている歩合給や出来高給は、労働時間が給与に反映されないため、今回の改正を契機に、労働時間に基づく給与制度への変更が求められている。