厚生労働省は19日に開いた有識者検討会で、企業が労使間で労働条件を取り決める際に参考となる就業規則のモデル改定案をまとめ、これまで原則禁止していた副業や兼業を認める方針を決めた。年度内に公表し、全国の労働局を通じて企業に周知する。
 一つの仕事にとらわれず、多様な働き方を求める人が増えている現状を踏まえた方針転換だが、本業と副業の両立に伴う長時間労働の抑制などが課題になりそうだ。
 就業規則は職場のルールや労働条件を記した文書で、従業員10人以上の企業に作成が義務付けられている。国のモデル規則に法的拘束力はないが、企業が一部をそのまま転用するケースも多い。
 これまでのモデル規則は「労働者は許可なく他の会社の業務に従事しないこと」と定め、違反した場合は懲戒対象としていた。改定案では「従事することができる」と改め、禁止、制限できるのは「秘密漏えい」や「会社の名誉を損なう」場合などに限った。
 一方、検討会のヒアリングでは労使双方の代表者から「長時間労働が生じる」「労災補償や社会保険の適用はどうするのか」など、課題が挙がった。このため、厚労省は新たにガイドラインを作成。働く人のスキルアップや所得増加といった利点に加え、労働時間の把握など企業側が注意すべき点も明記した。
 国の調査では、副業を希望する人は2002年から12年までの10年間で1割増加したが、実際に副業を持つ人は1割減少。85%以上の企業が認めていなかった。


※労働基準法第38条で「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められているため、本業と副業の勤務先の労働時間は通算しなければなりません。例えば、A社で平日8時間勤務し、土曜日はB社で8時間勤務する場合、通算の労働時間は週40時間を超えることになりますので、三六協定を結んだ上で割増賃金の支払いが必要になります。
 割増賃金の支払義務がA社、B社のどちらにあるかについては議論がありますが、原則として労働契約を後に締結した会社が負うとする考えが一般的です。後で労働契約をしたB社では週8時間しか勤務をしていなくても、B社に割増賃金の支払義務が生じます。
 「多様な働き方を促しすばらしい」という意見もありますが、実務的には上記のようにコストの問題もあり、「副業が長時間労働の温床となり過労死促進につながる」といった意見もあり、企業の副業解禁は慎重に考えた方が良いでしょう。