世界遺産・高野山(和歌山県高野町)の寺院に勤める40代の男性僧侶が、うつ病になったのは宿坊での連続勤務が原因だとして、橋本労働基準監督署が労災認定していたことが7日までに、男性の代理人弁護士への取材で分かった。労働事件に詳しい別の弁護士は「僧侶の労災認定は聞いたことがない」と話している。

 男性の代理人弁護士によると、男性は2008年から寺院で働き始めた。寺の宿坊の宿泊者らが参加する読経の準備を午前5時前から始め、日中は宿泊者の世話や寺院の通常業務に従事。繁忙期には、就業時間が午後9時まで及ぶこともあった。

 15年12月にうつ病を発症し、その後休職。同年の4、5、10月に休みが1日もなく勤務が続いたことなどが原因だとして、17年5月に同労基署に労災申請した。労基署は同年10月、少なくとも1カ月間の連続勤務が認められるとして労災認定した。

 代理人弁護士は「修行であって労働ではないとされてきた僧侶の仕事が、労働と認められたという点で意味のある認定だ」と評価。寺院側の代理人弁護士は「コメントできない」としている。

 高野山には117の寺院があり、ここ10年間、宿坊の宿泊者数は20万〜40万人で推移。高野山開創1200年の15年には44万人超が宿泊した。〔共同〕