判例

2012年06月02日

精神的な不調を抱え欠勤を続ける従業員への対応

日本ヒューレット・パッカード事件(最高裁平成24年4月27日判決)
最高裁判所は、平成24年4月27日、会社が従業員に対して行った諭旨退職の懲戒処分(本件処分)について、就業規則所定の懲戒事由を欠くものとして無効、とする判決を出しました。

(概要)
 会社は被害妄想など何らかの精神的な不調により欠勤を続ける従業員に対し、欠勤の理由が実際には事実として存在しないため、特別な事由による休職は認められないとしたが、従業員は欠勤を継続し、その後も従業員に対し出勤の督促をしたが欠勤を継続したため、就業規則51条(欠勤多くして、正当な理由なしに無断欠勤引き続き14日以上に及ぶとき)に該当することを理由に諭旨退職の処分とした。

 最高裁は、精神的な不調を抱え労務提供が行われていない当該従業員への対応に関し、下記のような判断を示しました。

「このような精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる従業員に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるところであるから、使用者である上告人としては、その欠勤の原因や経緯が上記のとおりである以上、精神科医による健康診断を実施するなどした上で(略)、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、被上告人の出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の懲戒処分の措置を執ることは、精神的な不調を抱える従業員に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い。

この判決により従業員側の
1、会社における従業員としての地位確認
2、平成20年10月から毎月末日限り42万8059円(月額給与)及び同年12月から、毎年6月10日、12月10日限り100万円(賞与)に加えて、各支払時期の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払い
の請求が認められました。 対応を間違うと会社にとって大きな負担となります。

裁判所の判例データベース

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2012年05月30日

整理解雇の四要件(四要素)

 整理解雇については、東洋酸素事件(東京高裁昭和54年10月29日判決)で四要件が示され、この要件にすべて適合しないと無効(不当解雇)となるとされた(四要件説)。

/涌整理の必要性  余剰人員の整理解雇を行うには、削減をしなければ経営を維持できないという程度の必要性が認められなければならない。

解雇回避努力義務の履行  期間の定めのない雇用契約においては、人員整理(解雇)は最終選択手段であることを要求される。
例えば、役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等により、整理解雇を回避するための経営努力がなされ、人員整理(解雇)に着手することがやむを得ないと判断される必要がある。

H鏖鮓杣堊定の合理性  解雇するための人選基準が合理的で、具体的人選も合理的かつ公平でなければならない。

ぜ蠡海梁電性  整理解雇については、手続の妥当性が非常に重視されている。例えば、説明・協議、納得を得るための手順を踏まない整理解雇は、他の要件を満たしても無効とされる。

四要素説

 近年の裁判例の傾向は、これらを四要素としてとらえ、すべてに適合しない場合でもそれぞれの要素を総合的に判断して整理解雇の有効性を判断するものが多くなっている。 

ナショナル・ウエストミンスター銀行事件(東京地裁平成12年1月21日判決)
いわゆる整理解雇の四要件は、解雇権の濫用にあたるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって、各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく、本来事業ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行なうほかないものである。


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2012年05月23日

「不完全な労務の提供」片山組事件

片山組事件最高裁判決(最1小判平成10年4月9日・労判736号15頁)において「不完全な労務の提供」につき判断枠組みが示されるに至った。

片山組事件 最高裁判決 の一般論
  労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては,現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。

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2012年05月17日

飲酒死亡は過労が原因/二審も会社の責任

システムエンジニアの次男が急性アルコール中毒で死亡したのは過労が原因として、さいたま市の両親がソフトウエア開発会社フォーカスシステムズ(東京)に1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は22日、約5,960万円の支払いを命じた一審東京地裁判決を変更、約4,380万円に減額した。

斎藤隆裁判長は一審同様、月100時間を超える時間外労働や配置転換で心理的負荷が過度に蓄積、うつ病などを発症して大量に飲酒したと判断。「上司らは長時間労働を把握していたのに適切な措置を取らなかった」と会社の責任を認めた。

一方、「睡眠不足の解消に努めるべきだったのにブログやゲームに時間を費やした」として過失相殺の割合を増やした。

判決によると、25歳だった次男は2006年9月、無断欠勤して京都市の鴨川沿いでウイスキーなどを飲んで死亡。中央労働基準監督署は07年10月に労災認定した。

(共同通信)
2012年3月22日



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2012年05月03日

神戸弘陵学園事件

使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。

神戸弘陵学園事件(最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決)  


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2011年05月20日

執行役員も「労働者」、労災不支給取り消す

 脳出血で死亡した執行役員の男性(当時62)が労災保険法上の「労働者」に当たるかどうかが争われた訴訟で、東京地裁の青野洋士裁判長は19日、「労働者に当たる」として、労災保険の不支給処分を取り消す判決を言い渡した。原告側弁護士によると、執行役員が「労働者に当たる」とする判断は初めて。
 
 男性は機械商社のマルカキカイで部長を兼任する執行役員を務めていた。2005年に商談からの帰りの車中で体調不良を訴え、脳出血で死亡。男性の妻の労災申請に対し、船橋労基署は「労働者に当たらない」として退けていた。
 
 青野裁判長は「一般従業員時代と執行役員時代の業務実態が変わらず、一定額以上の取引では本社の決裁を仰ぐなど指揮監督を受けていた」と認定。男性は毎月の経営会議に出席していたものの「最終意思決定は取締役会でしており、経営会議の構成員だからといって当然経営者ということにはならない」として、男性の労働者としての権利を認定した。
 
 死亡が業務の多忙さに起因するかどうかは判断しておらず、原告側は改めて労基署に労災認定を求める。原告側弁護士は「零細企業の取締役を実質従業員と認める司法判断はあったが、大企業に多い執行役員も労働者に当たると判断されたことで『名ばかり役員』が減るのではないか」としている。

日本経済新聞 2011/5/19 20:59


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2011年05月19日

飲酒運転の懲戒免職は適法

飲酒運転による物損事故で懲戒免職となった元高知県職員の男性が、県に処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁は10日、処分を取り消した一審高知地裁判決を取り消し、男性の請求を棄却した。

一審判決は「飲酒運転に対する規範意識の高まりを考慮しても、処分は厳しすぎ、社会通念上妥当性を欠く」としたが、小野洋一裁判長は「物損にとどまらず、人身事故につながった危険性が高く、公務員に対する信頼を失わせた」と指摘。「処分は裁量権の範囲を逸脱、乱用したとは認められない」と判断した。

判決によると、高知土木事務所の主任技師だった男性は2009年4月、高知県土佐市の居酒屋などで飲酒後、乗用車で帰宅中に信号機に衝突する事故を起こし、呼気1リットルあたり0.7ミリグラムのアルコールが検出されたため道交法違反(酒酔い運転)で逮捕され、同年5月に懲戒免職となった。

高知県は1997年、全国に先駆けて「飲酒運転の職員は原則として免職」という基準を導入。県は「適正な判断がなされた。今後も服務規律の徹底に努めたい」とコメントした。

(共同通信)
5月10日



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2011年04月14日

個人事業主でも「労働組合法上の労働者」 最高裁が判断

住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結ぶ個人事業主は「労働組合法上の労働者」に当たるか。劇場側と個人として出演契約を結ぶ音楽家の場合はどうか。二つの訴訟の判決で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は12日、いずれも「労働者に当たる」との判断を示した。 
 
企業が外注化を進め、個人事業主が急増する中で、判決は個人として働く人の権利を重視し、組合をつくって団体交渉する道を開いた。IT技術者やバイク便のドライバー、ピアノ教室や塾の講師など形式的には独立した事業主でも、働き方の実態によって労働者と認める先例となりそうだ。 
 
うち一つの訴訟を起こしたのは住宅設備会社「INAX」(現リクシル)の子会社「INAXメンテナンス」(IMT、愛知県常滑市)。製品の修理などを一定の資格をもつ「カスタマーエンジニア」(CE)に委託してきた。
 
CEでつくる労働組合は2004年9月、労働条件を変える際には事前に協議することなどを同社に申し入れたが、拒否された。この対応を中央労働委員会が不当労働行為と認定し、団体交渉に応じるよう命じたため、同社が命令の取り消しを求めて提訴した。 
 
第三小法廷は、IMTがCEの担当地域を割り振って日常的に業務を委託していたことや、CEは業務の依頼を事実上断れなかった点を重視。「時間、場所の拘束を受け、独自の営業活動を行う余裕もなかった」として労働者に当たると結論づけた。 
 
09年4月の一審・東京地裁判決は労働者と認めたが、同年9月の二審・東京高裁判決は「業務の依頼を自由に断れ、いつ仕事をするかの裁量もあった」として労働者とは認めなかった。第三小法廷はこの二審判決を破棄し、IMT側敗訴の一審判決が確定した。IMTは今後、CE側との団体交渉に応じることになる。 
 
もう一つは新国立劇場(東京都渋谷区)のオペラ公演に出演する1年ごとの契約を結んでいた合唱団員をめぐる訴訟。ただし第三小法廷は、契約を更新しなかったことが不当労働行為かどうかをめぐり、審理を東京高裁に差し戻した。 
 
合唱団員の女性は1998年から5年間、毎年のオーディションに合格し、契約更新を続けた。しかし03年に不合格となり、女性が加入する労働組合が劇場側に団体交渉を申し入れたが、拒否された。 
一、二審判決は「労働者に当たらない」と判断したが、第三小法廷は「女性は公演に不可欠なメンバーとして劇場に組み入れられており、事実上、出演を拒めなかった」と判断した。(山本亮介) 
 
〈労働組合法上の「労働者」〉 職種を問わず、賃金や給料などの収入によって生活する人を指す。憲法で保障される「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三つの権利が認められる。このうち団体交渉権は、賃金や解雇などについて労働組合が使用者と交渉する権利のこと。労働組合法では、正当な理由もないのに使用者が労働組合の代表者との団体交渉を拒めば、不当労働行為になると定めている。 


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2010年12月28日

有給休暇訴訟で教員敗訴

「日単位取得で問題生じず」

 愛知県教委に「分単位での年次有給休暇(年休)取得は認めない」と言われたことを不服として、同県津島市立小学校の男性教諭が県に10万円の慰謝料を求めた訴訟の判決で名古屋地裁(鈴木陽一郎裁判官)は27日、「日単位で年休を取れば問題は生じなかった」などとして請求を棄却した。

 判決によると、県条例は年休を毎年度20日とし、請求があれば時間単位でも与えられると規定。1日の勤務時間が今年1月に8時間から7時間45分に短縮されたため、時間に換算した年休も1日当たり15分ずつ減った。

 教諭は訴訟で「年休を一方的に減らした上、完全消化できない制度にしたのは違法」と主張していた。

中日新聞:2010年12月27日 22時56分



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2010年12月23日

飲酒運転での解雇無効 福井地裁「合理性に疑問」

 バイクの飲酒運転で受けた懲戒解雇処分は重すぎるとして、郵便事業会社の元社員の男性(36)=沖縄県名護市=が同社に処分取り消しなどを求めた訴訟の判決が20日、福井地裁であり、坪井宣幸裁判官は「処分の合理性には疑問が残る」とし無効とするよう命じた。

判決理由で坪井裁判官は、就業規則が「飲酒運転を行った者は解雇」と定めていることを指摘しつつ「他の懲戒事例と比べ合理性には疑問が残り、会社で働く人の全てを奪う処分は社会通念上も相当性を欠く」とした。

男性は「処分は見せしめだった」として慰謝料も求めたが、判決は「証拠はない」として棄却。一方、懲戒処分から判決までの給料(約395万円)の支払いを命じた。

茨城新聞ニュース:2010年12月20日(月) 19時33分  共同通信社



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